嫌悪しない顔

女子高生は茶色のローファーで銀杏の実を踏みつけたのだろう。微かにかおる。彼女の通学路の景色が。堂々とカレーパンにかぶりつき、巻き髪と胸元につけた揚げカスを、つまみ足元へ捨てる指の反復運動、連なる端指のピンキーリング。俯向く青年は小さな野菜ジュース飲み干すと、パックを潰し緑のしぶきを知らない女のハンドバッグにかけた。嫌悪した女の顔は醜いが正しい気がした。
世界の端っこのような景色を、横浜線の緑色のシートに座って見ていた。

ー2015年11月某日