滞在記その2

滞在記その2


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ちょうど六四天安門事件のプロテストのイベントが毎年あるのでそれに参加した。キャンドルナイト!火をリレーするとか、供養とか、キャンドルに複数の意味を乗せている感じ。景色は精霊流しみたいだっ
路上には小さなパーティーがそれぞれのブースを展開してTシャツを売ったり演説をしていたり白い薔薇の造花を売ったり。会報紙やビラやステッカーもものすごい数渡されて、なんというかイメージしていたものよりもだいぶイベント感があった。
それぞれのパーティーはやっぱり少しずつ違うっぽい。また他の抗議団体からだいぶ外れているようなパーティもあって、それは学生による「プロテストイベント会場に行かないでください!」という内容のものだった。というのも、イベント的に消費するんじゃなくてそれぞれが考えることが大事だ!という主張。カウンター魂感じる。やっぱ何につけても抗うような。そういう主張も自由にできることが重要だ。

6/3には、六四のプロテストイベント(キャンドルナイト)に少し気の乗らない人によって催された座るだけの活動に参加した。実行委員会の進行に沿って歌ったり演説を聞いたりするキャンドルナイトの構造が、中国政府のやっていることと同じなんだよなー、とか、みんなでキャンドル持つとかしてプログラムに従うなど少し拘束されるような感じとか、ってことにちょっとだけ疑問を持っている人によって20:00から明け方までダラダラ屋外に座って喋るという、1989年の座り込みの再現、と言ったら言い過ぎ!ってくらい(でもその実そういう活動)のゆるーい雰囲気だった。

6
言語への順応?というか周りの人の私のブロークンイングリッシュへの順応かもしれないけれど、六月の中旬頃からの私の言語の成長はおそらく眼を見張るものがあった。上達を感じる!!しかし、桜木花道がメキメキと成長して山王戦で怪我をした時アヤコの「失うのもまた早い、この4ヶ月がまるで夢だったかのように・・・」というシーンを思い出したりして、続けなければ。と思うなど。ストゥーピッドだ。やー本当に、来たばかりの時は喋りたいことも喋れず緊張しっぱなしで辛くて仕方なかったけれど今はだいぶ良くなったなあ。親が喜びそう。「彩佳が英語喋ってる!!!!!!」とか言って。

7
私は高校生の頃バスケ部だったのですが、それを帰る4日前に言ったら、俺も!私も!もっと早く言ってくれれば一緒にバスケしたかったよ〜なんで言ってくれないのよ〜とのことで、自己紹介の際には自分のことを惜しみなく公開していこうと思った。
2012年あたり、ももクロが好きだった。小学生の頃からポピュラーなアイドルとはそこそこの距離を保ちつつちょこちょこチェックしている。ミーハーであることを隠すというか。体の外のことに関して”表現”という意味で個性的なファッションが好きだったけど、内面的にそのコミュニティーのマジョリティーと違う部分を持っていることに対して自信がなかった。なんか変な書き方になってしまったけどわかりやすいかなあ、どうなんだろう。まあそういうわけでちょっとしたパソナリティーを誰かに話すこともあまりなく、とにかく詳細な部分の共有をすっ飛ばしながら他者と関わって、あるいは自分と向き合っていたけど、そういう部分は必要ないんじゃないか、ということに気づいて。軽さと重さのバランスを香港で会得した気がする。よりオープンな感覚。香港ではアイドルの話をブロークンランゲージをいいことにベラベラ話した。すっきりしたよ。
Jamieにどうして日本に興味を持つようになったのかを聞いたらきっかけはPerfumeだと言っていて、アイドルの話ですごく盛り上がり、そこから流行の中の日本の女性像、例えばどうしてブルゾンちえみがあのスタイルで日本でブレークしたのかとか話せて面白かった。女性であることを利用した「自虐的なあるある」や、「ブサイク」「デブ」などを武器にせざるを得ない?のかな、そんなふうに思う。香港の仕事における男性と女性の差は今ではほとんどない。テレビでもメインキャスターがいつも男性で女性がアシスタントということもないらしい。まあ香港にはチャンネルが一つしかないのでテレビはそんなにポピュラーではないとのことで。なんにせよもはやミーハー心隠す必要なし!帰ったら又吉の小説読もう。

8
「お札を間違えて洗濯したんだ。」
「手で洗ったの!?アライグマみたいだね」
「違う違う洗濯機だよ、アライグマかわいい。もっと真似してよ」
「やらないよ!君がやってよ」
「ああ、そういえばyoutubeのアライグマが綿菓子洗うやつ知ってる?」
「知ってる!あれまじかわいいよねー」
「この動画もいいよ」どれどれ・・・
youtubeすげー。日本の友達と同じテンションと内容で有名動物モフモフ動画の話ができる。ジェネレーションです。google mapとfacebookもすごい。情報のシェアが簡単なの本当に便利。

お札は洗濯機で洗いました。無事でした。さすがお札、つよーい!Wありがたやー。オールドマーケットにあったお金の神様の像に、何事もなく無事にお金を返していただきありがとうございましたと言う。私はたまに信心深くなる。調子いいようだけど、その都度本気である。
古物商では返還前のコインがよく売られていて、それにはザベスの顔がついてる。コインに西洋人の顔がついてると欧米感でるね。たまーにお釣りに混ざってることもあるよ。

競馬場は日本のそれとは違ってハイクラスな印象、歯のほとんどないおっちゃんが「しね〜〜」「朝飯食ってきたんかオラー」とか言っているのとは違う感じ。ギャンブル好きの友人曰く「くそブリティッシュ」とのこと。初めて聞く形容。もっといろんな組み合わせをして言葉で遊べるようになりたいと思った。


9
「今日の昼にトークショーをやってください」と、ある朝に急にレジデンスのスタッフから(レジデンスのビルの中にギャラリーがある。便利)言われた。以前から聞いていたのは、30人の高校生が展示を観にきて作品について少し解説する、くらいの話で快諾していたが、急に「14:30から16:30の二時間、政治について絡めながら作品についての話をしてください」と言われたのである。いや!無理です〜〜!トランスレーションもなしに!?ノーウェイ〜!!なにか自分の考えを言葉にして投げるには語彙が圧倒的に足りないので作品の中で行ってもらったディスカッションの内容を転用したワークショップをすることにした。
3人組になり計10グループを作り、特定しない他のグループの①ゴシップについて②他のグループはどこのグループのことを話しているか、についてをこそこそ話でディスカッションする、と言う内容のワークショップをした。人が集まってグループを作ること、その身近さや、集まって誰かについて話すこと、他人を観つつ自分も見られている、などの状況をつたない英語で解説し、日本で先日共謀罪が採択されたことについても少し話した。「ソーリーマイイングリッシュイズブロークン、プリーズゲス、イッツジャパニーズスタイル、ハハ」
ワークショップの内容には満足しているけど、もしいじめがあるような学級だったらと怖かった。高校生たちは想像していたよりもずっと大人で安心したが、動揺したり傷ついた子もいたかもしれない。それをケアする動きも小さいながらにあったかもしれない。広東語がわからないのがずっと苦しい。

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コマーシャルギャラリーは美しくて均一で、放っておいてくれる居心地の良さを感じる。オルタナティブスペースは展示してる作品のことを聞いてるうちに、ああこれは前の展示の人の痕跡でここではこういうの直さないようにしています何故なら・・・という感じでスペースの話もめちゃ教えてくれた。
深酒をするとキャリアの話と恋バナを交互にした。香港でめちゃくちゃモテたらどーしよ、などと無駄な心配をしていたのだけど全くモテず、シケてんなーと冗談をかましていた。しかし帰国直前になって急にモテ始め、1~2人のソルジャーが現れる。香港では一人の女性にいいよる複数人の男性のことをソルジャーとよぶそうだ。慣れない言語でソフトに断るすべを身につける。男女関係が一番の英語の上達理由だと思う。
酔っ払った勢いで水着を購入したら店のおばさんが近くのプールとビーチの場所を教えてくれて、また何かあったら電話しろと電話番号も教えてくれた。ついでに美味しい麺屋も。
とはいえ、香港はかっこいい人が本当に少ない。目に栄養が欲しい時は島の浮かぶ海を見た。動物園に行ったらいろんな種類の猿と鳥がいたよ。


周辺のことも関係しつつ環境に依存して形が変わって行くものをイメージしているのかも、とか。考えることにたくさんの時間を使えるのが嬉しい。集中するというのは他のことを分断するという意味ではないと思うようになったり。スムーズなスイッチングができるようになりたいなあ。 
(続く)