メモ抜粋2


「ここから先は無菌室です。何も持ち込まないでください。武蔵野美術大学とは関係のない空間です。卒業制作展とも関係ありません。小平市にも所属していません。」


(自分も含めた)みんなが、等しく同じ経験をするのは不可能だろうか。
生まれた瞬間から違う人生を歩いている。しかしその人生たちを一瞬だけ束ねることはできないだろうか。不可能である。しかし、不可能という点では同じだ。

あの時、わたしはボールペンで紙に絵を描いていた。わたしはペンを縦横無尽に走らせることができたが、360°にしかいけないこともまた事実であった。ボールペンを手放してみた。絵を描くことはできなくなったが、360°とインクから解放されてなんでもできた。恐ろしく、自由であった。


大海原にひとり取り残される想像を、よくする。それは、ものすごく怖い。周りに何もなく、空と海がつながって見える。夜はただ黒いだけになる。目をつぶっても、つぶらなくても、同じ闇の中だ。しかし頭の中ではきっといろんなことを考える。家族や恋人や友人のこと、それも含め社会とつながっていること・・・。それに、明日のこと生きるためのことご飯のことなども考えざるを得ないだろう。そこは、何次元だろうか。見えないものを見るときそこはどこなのだろう。(わたしの走馬灯に登場する全員を別々の大海原に連れて行くことはできるだろうか。)